このページはPR・広告を含みます

半導体の研究開発は直列から並列へ Applied Materialsの50億ドル拠点が示す競争軸

半導体の研究開発は直列から並列へ Applied Materialsの50億ドル拠点が示す競争軸のイメージ

ニュースの概要

半導体製造装置大手のApplied Materialsが、米カリフォルニア州サニーベールで研究開発拠点「EPICセンター」の稼働を始めた。投資額は最大で約50億ドル、延床面積は約5万5742平方メートルで、先端クリーンルームは約1.6ヘクタールに広がる。特徴は、TSMC、Intel、SK hynix、Micron、Samsung Electronicsといった半導体メーカーに加え、大学や他の装置メーカーも同じ施設の中で研究できる点だ。これまで順番に受け渡してきた開発工程を、同時並行で進める狙いがある。

引用元: Applied Materials、約50億ドルを投じた半導体研究用EPICセンターを稼働(Tech Times)

分析・見解

装置、材料、チップ設計が同じ床で動く意味

従来の半導体開発は、リレー競走に近かった。装置メーカーが新しい装置を作り、材料メーカーが薬液やガスを調整し、チップメーカーが自社工場で試す。問題が見つかれば、結果が前の担当に戻るまでに数か月かかることも珍しくない。EPICセンターは、この受け渡しを一つの建物の中で完結させようとしている。

例えるなら、料理の試作を厨房ごとに別の街で行っていたものを、一つの調理場に集めるようなものだ。味見の結果がその場で調理器具の設計に返る。1.6ヘクタールという広さは、サッカー場二面分ほどに相当し、単なる実験室ではなく小さな量産ラインに近い規模である。

ライバル同士が同居するための信頼設計

TSMCとSamsungは先端工場の受託生産で競い、IntelもSK hynixもMicronも互いに競合である。通常なら自社の研究内容は厳重に隠す。それでも同じ施設を使う理由は、装置メーカーが間に立つ中立の場所だからだ。

ここで重要なのは、秘密を守る仕組みをどう作るかである。区画の分離、データの取り扱い、人の出入りの管理が甘ければ、誰も本気の課題を持ち込まない。技術そのものよりも、運用への信頼が成否を分けるだろう。

微細化の限界が協業を必然にしている

背景には、回路を小さくする競争の難しさがある。縮めるだけでは性能が上がりにくくなり、トランジスタの立体構造、配線の新材料、チップを積み重ねる実装など、複数の技術を同時に変える必要が出てきた。一つの変更が別の工程に影響するため、直列の開発では組み合わせの検証が追いつかない。並列化は便利さの追求ではなく、必要に迫られた選択といえる。

装置より先に売れるのは開発時間の短縮かもしれない

興味深いのは、Applied自身の収益構造である。装置は顧客が買ってはじめて売上になるが、顧客の次世代工程に早く入り込めば、採用される確率が上がる。つまりこのセンターは研究施設であると同時に、顧客との関係を深める場でもある。

顧客側にも利点がある。装置の仕様を決める段階で自社の要望を反映でき、量産開始後の歩留まり(=良品の割合)改善も早まる。今後は、研究から量産までの距離が実際に縮むかどうかが焦点になる。

ビジネスへの影響

部材や装置の中堅企業は早期参画の窓口を探す

並列開発では、部品、材料、検査機器の企業にも早い段階から声がかかる。完成品を納めるだけの関係では、仕様が固まった後に入ることになり、価格競争になりやすい。まず自社の技術が顧客の次世代工程のどこに効くのかを、一枚の資料にまとめておきたい。大学との共同研究の枠があるなら、そこから接点を作るのも現実的だ。

半導体を買う側も調達計画を見直す時期に来る

半導体を使う側の企業にも影響はある。開発が速くなれば、新世代チップの登場が前倒しになる可能性がある。ただし量産品質の安定には別の時間がかかるため、発表と実際の入手の間には差が残る。製品設計では、現行品と次世代品の両方に対応できる余地を残し、調達先を一社に絞らない方針が安全である。

自社の受け渡しで待ち時間が出る場所を洗い出す

この発想は半導体以外にも使える。設計、試作、検証を順番に進めている部署は、手戻りの待ち時間がどこで生じているかを測ってみるとよい。関係者を同じ場で動かすだけで、数週間単位の短縮につながる例は製造業に多い。まず一つの案件で、設計と検証の担当を最初から同席させる試行を勧めたい。

関連記事

本サイトは公開情報を整理した業界レポートであり、特定の施工会社・機器・工法の推奨ではありません。クラス基準・規格の記述は概要であり、実際の設計・施工・バリデーションは各規格の原文と専門家の確認が必要です。